研究概要 |
現在, マツ材線虫病対策として抵抗性マツが植栽されているが, マツの抵抗性が上昇した場合に, 病原生物であるマツノザイセンチュウの病原力が上昇するかどうか明らかにすることが本研究の目的である。これまでのマツ材線虫病に関する研究により, マツノザイセンチュウの病原力は遺伝形質であること, またその病原力には大きな変異があることが明らかになっている。これらのはマツノザイセンチュウがこれまでのマツより抵抗性の高いマツに感染すると, 病原力に選択が働き, 病原力が上昇する可能性を示唆している。抵抗性マツの植栽が行われる現在, マツノザイセンチュウの病原力上昇がおこるかどうかは, 今後の防除対策・抵抗性育種戦略を構築するために早急に明らかにる必要がある。 本年度は来年度以降の接種試験に用いるクロマツさし木苗およびクロマツ人工交配苗の養成を行うとともに新たにクロマツ10系統のさし木を行った。またさし苗4クローンと6つの人工交配家系にマツノザイセンチュウを接種して, これらの系統間の対的な抵抗性の差を調べ, 来年以降の実験にどの系統を用いるか討した。 また, 野外の抵抗性の異なる林分でマツノザイセンュウの平均的な毒性が異なるかどうか明らかにするために, 熊本集水俣市に設定してある抵抗性マツの試験地内で発生したマツ枯死木から材片を収集し, マツノザイセンチュウを分離し, アイソレイトを確立した。また感受性の高いマツ林分からもマツノザイセンチュウを収集するため, 空中散布等の防除により維持されている非抵性のマツ林分の分布について情報収を行った。
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