本研究では、国際自然保護連合(IUCN)によって区分されている、絶滅危惧IA類(Critically Endangered ; CR)、絶滅危惧種IB類(Endangered ; EN)、軽度懸念(Least Concern ; LC)の樹種と、広く分布する樹種の強光馴化特性を明らかにし、絶滅危惧種の適切な育苗方法や管理方法を開発することを目的とした。 CRとしてShorea reslnosa (Sr)、Shorea singkawang (Ss)、ENとしてShorea leprosula(Sl)、LCとしてShorea curtisii(Sc)、絶滅危惧種に指定されていない樹種としてShorea macroptera (Sm)と、絶滅危惧種指定に対して未確定となっているNeobalanocarpus heimii (Nh)を選んだ。1年生ポット苗を用いて、各樹種の葉のガス交換特性、葉厚、葉内窒素濃度、葉内クロロフィル量を調べた。ポット苗を相対照度約6%に設定した寒冷紗内で生育した後、全天環境下に移し測定をおこなった。 実験の結果、光環境が変わった際にS1のように新しい葉を展葉するタイプは、環境の変化に対し順応しやすい樹種と考えられる。一方、光阻害を受け光合成速度が落ちている状態のまま着葉しているSrやSsは環境の変化に馴化しにくい樹種と考えられる。このように、CRに指定されているSrやSsは環境変化に対して脆弱な樹種であると考えられ、これらの樹種を用いて植栽をおこなう際には長期間のハードニング処理をおこなうなどの対策が必要であると考えられる。
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