研究概要 |
前年度の検討では、塩化ベンザルコニウム(BAC)の同族体(C12、C14、C16)を単独で用い、処理した木材の溶脱試験を実施し、溶脱挙動を同族体間で比較することで土壌成分や腐朽生成物の影響を評価した。本年度は3つの同族体を同量含む処理木材を用い、溶脱挙動の同族体問の差異をより直接的に比較することで、土壌成分や腐朽生成物の影響を評価した。土壌中に一定期間設置した処理木材を回収し残存するBACを定量することで溶脱挙動を評価したところ、どの同族体もほぼ同程度溶脱していることが確認された(C12≒C14≒C16)。この傾向は同族体単独で処理した木材を用いた場合と同様であった。また、脱イオン水中での溶脱試験を行った場合も、各同族体単独で処理した場合と同様、C12>C14>Cl6の順に高い溶脱率を示すことが確認された。この同族体間の傾向は土壌中の場合と異なっており、また、各同族体の溶脱率は土壌中よりも低かった。腐朽生成物として腐朽木材の水抽出物を含む水溶液を用いた溶脱試験を行ったところ、脱イオン水の場合よりも溶脱率が高くなり、アルキル鎖が長いほうがより溶脱することが確認された。土壌に含まれる代表的な化合物として、フミン酸ナトリウムを含む水溶液を用いた溶脱試験を行ったところ、脱イオン水中よりも高くなるが、溶脱率を同族体間で比較すると,脱イオン水中とは異なりC12<C14<C16で高くなることが確認された。また、無機塩を含む水溶液を用いた溶脱試験では、溶脱率が高くなるものの、脱イオン水中と同じ傾向(C12>C14>Cl6)であった。以上の点から、土壌中の試験で得られた同族体間の溶脱率の関係(C12≒C14≒C16)は、腐朽生成物や土壌中の有機成分が関与することで、アルキル鎖の長い同族体の溶脱がより促進されることで生じると考えられた。
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