ヤツガタケトウヒ成木のミクロフィブリル傾角の樹幹内変動を地上高4か所、4方位で調べた。いずれの地上高においても、ミクロフィブリル傾角は、髄付近で大きく、10年輪目まで急減した後、徐々に減少して、ほぼ一定になる半径方向変動パターンを示し、他のトウヒ属と同様にミクロフィブリル傾角の値および樹幹内変動が小さいことが明らかになった。ただし、アテ材が形成された1方位では、ミクロフィブリル傾角が大きかった。次に、ミクロフィブリル傾角の値と樹幹内変動が小さいヤツガタケトウヒと傾角の値と樹幹内変動が大きいスギの成木を用いて、地上部の重量と根系を調べた。ヤツガタケトウヒでは、丸太の同的ヤング率が7-9GPa、地上部重量に対する樹冠重量の比が0.2~0.3であったのに対して、スギでは、丸太の同的ヤング率が2-5GPaと低く、地上部重量に対する樹冠重量の比が0.40と大きかった。ヤツガタケトウヒでは、直径、樹高、地上重量が大きかったにもかかわらず、根系が浅く横方向に長かった。両樹種ともに、根材は偏心成長をしていたが、アテ材は認められなかった。樹種間でミクロフィブリル傾角の値や樹幹内変動が異なることには、樹冠と樹幹における力学的環境が影響を及ぼしている可能性が考えられる。地上部のみにアテ材が形成され、アテ材でミクロフィブリル傾角が大きくなることには、地上部の力学的環境が影響を及ぼしていると考えられる。
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