研究課題
小規模養殖とは、開発途上国の農家が農業廃棄物を利用してため池や水田で行う低コスト・リサイクル型の動物性タンパク生産システムである。小規模養殖では、家畜糞等の施肥により涌いた植物プランクトンや米糠などが、養殖魚の主な餌とされている。しかしながら、本年度ラオスの養殖池や水槽内で実施したティラピアを用いた実験結果によると、植物プランクトンと米糠の餌料効率及びタンパク効率は、配合飼料に比べて著しく低いことが分かった。また、安定同位体比による養殖池の食物網解析では、ティラピアの成長が米糠や植物プランクトンだけでなく、底性生物(アカムシ、水生昆虫の幼生等)にも強く依存していることが示唆された。以上の結果から、ラオスの小規模養殖では、植物プランクトンが直接に魚の餌となるだけでなく、それらの遺骸等が堆積して底性生物の生産を増大させ、それらが魚に摂餌されるといった間接的な効果も重要であったと考えられた。また、米糠にはタンパク質節約効果があること、生の米糠を加熱処理することで餌料効率が大幅に改善されることが、予備的な実験結果として得られている。次年度は、養殖池内におけるアカムシ等底性生物の現存量や生産量の季節変化、アカムシの餌料効率及びタンパク効率を調べ、養殖魚の餌としての底性生物の相対的な重要性を定量的に評価する予定である。
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