小規模養殖とは、開発途上国の農家が農業廃棄物を利用してため池や水田で行う低コスト・リサイクル型の動物性タンパク生産システムである。本年度は昨年度に引き続き、水質、プランクトン群集の種組成、生産力についてさらに詳細な調査を実施した。結果、全窒素または全リンとクロロフィルaは強い正の相関を示し、植物プランクトン量が施肥量や換水頻度に左右されることを示唆した。また、透明度とクロロフィルaの間には有意な負の相関が認められ、透明度が植物プランクトン量の指標として有効である可能性が示唆された。動物プランクトンは、橈脚類、枝角類、輪虫類の亜熱帯種と汎世界種が出現し、とくに透明度の低い池では富栄養水域を好むネズミワムシ類等が多かった。プランクトン群集の総生産は表層で最大となり、深度にともない急減した。呼吸では、深度方向の変化は小さかった。その結果、大部分の池で、純生産は表層と中層ではプラス、底層ではマイナスとなった。水柱全体で積算すると、総生産は439±200mgO_2m^<-2>d^<-1>(平均±標準偏差)と、呼吸(327±185mgO_2m^<-2>d^<-1>)を上回り、プランクトン群集は全体として有機物の供給源になっていたと言える。沈降物量は、底層で9.9±6.5mg m^<-2>d^<-1>と、中層4.4±3.1mg m^<-2>d^<-1>に比べ大きかった。また、沈降物中に占める強熱減量とクロロフィルa量の重量比は、559-189456と両層で極めて大きかった。この結果から、沈降フラックスに新鮮な植物プランクトンの遺骸が占める割合は小さく、堆積物表面からの再懸濁の影響が大きかったと考えられる。
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