研究概要 |
海産魚の閉鎖循環式養殖より排出された飼育排水および固形物を微細藻類の栄養塩として用いる際には排出される物質の組成およびその量を把握する必要がある。そこで平成20年度はトラフグの循環式飼育を行い、排出される物質の確保とその元素組成の把握を行った。 閉鎖循環式魚類飼育システム(総水量 : 210L/システム)を用いてトラフグ(平均体重178g)12尾/システムを無換水で10週間飼育した。試験区は浸漬式濾過装置および殺菌装置による循環濾過式飼育システム(SFUV)と泡沫分離, 装置および間欠式濾過装置(FFIF)による循環濾過式飼育システムの2試験区に設定した。飼育の結果、トラフグの成長および飼料効率には試験区間の有意差は認められなかった。水質については、アンモニア態窒素および亜硝酸態窒素濃度は飼育期間を通してFFIFシステムでSFUVシステムと比較し、常に低い値を示した。硝酸態窒素はどちらの試験区においても直線的に増加し、飼育終了時にはいずれのシステムも400mg-N/L以上蓄積した。オルトリン酸態リンも常に増加傾向を示したが、6週間目より、FFIFシステムがSFUVシステムと比較し、低い値を示した。これは泡沫分離液および固形物の回収により、飼育水中のリンが除去されたと考えられた。本結果より、トラフグの成長において両システム間かあまり差はないが、FFIFシステムは酸素供給および硝化能においてSFUVより優れていることがわかった。また、沈殿物、泡沫分離固形物の凍結乾燥後の重量測定により、FFIFシステムはSFUVより固形物の回収率が高いことがわかった。 飼育終了後、飼育排水および固形物中の窒素およびミネラル類の元素組成を把握し、微細藻類の培養に必要な元素を十分量含む飼育排水および固形物の回収も確認できた。今後は飼育排水および固形物の混合・調整を行い、微細藻類培養が可能であるかを調査する。
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