研究概要 |
本年度は養魚廃棄物を用いたナンノクロロプシスNannochloropsis oculataの培養に関する基礎的検討を行った。 まず、微細藻類の藻体組成を把握するため、通常に用いられるF培地(合成培地)で培養を行い、藻体組成を把握した。初期接種密度は5.92±0.32×10^5cell/mLであり、培養開始10日後に最高細胞密度3.87±0.49×10^7cell/mLに達し、それ以降、細胞数の停滞・減少が見られたので12日目で培養を終了した。F培地の組成、最終的に得られた乾燥重量および藻体組成から算出した栄養塩吸収率において、Fe,Mn,N,およびPが高い値を示した。藻体は必要とする元素のみを吸収し、組成に反映するためFe,Mn,N,およびPが重要な元素であると推察された。 次に養魚廃棄物に含まれる元素組成の把握としてトラフグTakifugu rubripesの飼育排水・沈殿物・泡沫分離装置内の飼育排水および泡沫分離装置内の固形物の4種を用いて、元素組成の分析を行った。その結果、それぞれの養魚廃棄物で異なる元素蓄積の傾向を示した。飼育水では、N,Mg,K,Ca,CuおよびMo、泡沫液体ではP,Fe,MnおよびZnが多く含有していた。同様に、沈殿物では、P,Ca,Moが相対的に高い値を示し、泡沫固体ではN,Mg,Fe,CuおよびZnが比較的高い値を示した。 藻体組成を参考にNを基準として必要元素量を算出した結果、ナンノクロロプシス培養に飼育排水のみを便用した場合、P,Fe,Mn,Zn,CuおよびCoの不足が生じるが、その他の沈殿物や泡沫分離物を利用することでP,Zn,CuおよびCoは補填できることが示唆された。しかし、養魚廃棄物におけるFeとMnの絶対量は不足しており、FeとMnは微細藻類の増殖に必要な元素であることから、外部からFeとMnの添加が必要であることが示唆された。 次年度では実際に養魚廃棄物から培地を作成し、ナンノクロロプシスの培養を試みる。
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