魚類自然集団における海域間の適応的分化の検出を目的として、日本各地に生息する遡河回遊魚シロウオをモデル系とした進化遺伝学的研究を行った。これまでの研究代表者の研究によって、本種には、1) 日本海型と太平洋型といった2つの地理的分化集団が存在すること、2) 個体の適応度に関与していると考えられるいくつかの形質に対照的な表現型分化が生じていることが明らかとなっており、このような変異は過去に激しい環境変動を経験した日本海に生息する系統の適応進化の産物であることが示唆されている。そこで、このようなシロウオ2型の適応的分化の痕跡をゲノム上に探索するために、新規に単離・マーカー化したマイクロサテライト100遺伝子座と形質変異の候補遺伝子群(GH-IGF1軸の成長関連遺伝子群と亢進性の食欲関連遺伝子群)のジェノタイピングデータを基にした集団ゲノム学的解析を行った。F_<ST>ベースの方法とLn RH検定を用いたゲノムスキャンによって、4マイクロサテライトマーカーと成長ホルモン遺伝子、ニューロペプチドY遺伝子がアウトライアー遺伝子座として検出された。これらの遺伝子座はすべて日本海型集団で遺伝的多様性が低く、日本海型集団がより最近の自然選択を受けたと考えられる。このように日本海側の集団と太平洋側の集団間における適応的分化の存在がエコゲノミクス解析によって強く示唆された。
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