研究概要 |
カジカ科魚類の異型精子は, 周年一定水温で飼育すると異型精子が形成されないというが, その形成要因は不明である. 異型精子欠如個体の作出が可能となれば, 異型精子の形成メカニズムを明らかにすることが可能となる. そこで, 秋(短日化&水温低下)の精子形成期に, 日長と水温を制御した実験区((1)短日化&一定水温,(2)短日化&水温低下,(3)一定日長&一定水温,(4)一定日長&水温低下)で飼育したときの異型精子形成の有無を調査した. 水温低下の実験区(2)および(4)において異型精子の形成は確認できたが, 一定水温の実験区(1)および(3)では精子形成が正常に進行していないため異型精子の形成も確認できなかった. これより, 一定水温により精子形成が正常に進行しないため, 異型精子が形成されないものと考えられる. 次年度は他の環境要因を制御して, 異型精子欠如個体の作出を検討する. カジカ科魚類の異型精子の機能を解明する一助として, 海産カジカのケムシカジカの雄性生殖器官および異型精子の性ステロイド合成能を比較検討した. 先ず, 雄性生殖器官の概観とその内部構造を比較すると, 精巣の構造は同じであったが, 輸精管の構造に若干の差異が確認できた. 両種の異型精子の形態はともに円盤状を呈していたが, ケムシカジカの異型精子の長径は淡水カジカと比べて有意に大きかった. ケムシカジカの異型精子においても, 淡水カジカ類と同程度の合成能を有することが明らかとなった. これより, 異型精子の性ステロイド合成能は, 淡水産および海産カジカともに見られる機能であると考えられた.
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