【本研究の概要】本研究では養殖場海水より分離されたテトラサイクリン耐性Photobacterium daselaesubsp. damselaeから大腸菌へ伝達されるDNA断片の配列の一部を明らかにし、大腸菌ゲノム上での挿入部位について解析した。【方法】対数増殖期のP.daselae subsp.damselaeおよび大腸菌W3110を25℃で約12時間供培養し、テトラサイクリンおよび培養温度(42℃)を利用して接合体を選択した。接合体のゲノム上に組み込まれた耐性遺伝子の周辺配列はインバースPCR法を用いて決定した。また、独立した接合実験で得られた複数の接合体のパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)パターンを比較し、サザンハイブリダイゼーションによりP.daselae subsp. damselae由来DNA断片の挿入部位を特定した。【結果と考察】P.daselae subsp.damselaeから大腸菌へ伝達されたDNA断片のサイズは少なくとも11kb以上であることが明らかになった。またこの11kbのDNA断片上には複数のテトラサイクリン耐性遺伝子やトランスポゾンの遺伝子等がコードされていた。多くの接合体は同じPFGEパターンを示し、サザンハイブリダイゼーションの結果と併せて考えるとP.daselae subsp.damselae由来のDNAフラグメントは大腸菌ゲノム上の限定された領域に挿入されていることが示唆された。 【意義】これまでに養殖環境中から分離される耐性菌の中には耐性遺伝子伝達能をもつものが存在することが明らかになっているが、その詳細な機構は不明である。本研究は環境中における細菌問での遺伝子伝達機構を明らかにしようとしており、得られる成果は耐性菌出現の耐性菌出現・拡大のメカニズム解明、および耐性菌出現の抑止対策につながる点で重要な研究である。
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