研究概要 |
昨年度は養殖場海水より分離したビブリオ科細菌Photobacterium damselae subsp. damselae04Ya311が保有する多剤耐性伝達性プラスミドの全塩基配列を高速シークエンサーを用いて決定後、coding sequence (CDS)の抽出およびアノテーションを行った。当該年度はアノテーションの結果から、配列情報が不確かと思われた約20箇所についてサンガー法を用いて配列を確認し、CDSを確定した後、DDBJ (DNA data bank of Japan)への登録を行った(2003年12月公開予定)。 本プラスミドは235のCDSを含む204,052bpの環状プラスミドであった。このうち約3割に該当する78のCDSから予想されるアミノ酸配列は既知配列との比較により機能予測が可能であった。本プラスミドは合計7つの薬剤耐性遺伝子をコードする多剤耐性プラスミドであり、接合伝達実験により本プラスミドを受容した大腸菌では、テトラサイクリン系、ベータラクタム系、マクロライド系、フロルフェニコールおよびクロラムフェニコールに対する感受性が低下しており、伝達された耐性遺伝子が接合体においても機能していることが確認された。さらに本プラスミド上にはグラム陰性菌のtype IV secretion systemに必要とされる20の遺伝子セットがコードされており、プラスミドの伝達は本システムを介して行われていることが強く示唆された。また、プラスミド上にコードされているリラクゼース遺伝子を用いた解析により本プラスミドがMOB_Hというプラスミドグループに属する新しいタイプのプラスミドであることが明らかになった。この新しいタイプのプラスミドは他の養殖場由来菌からも検出され、海洋細菌固有のプラスミドタイプとして養殖環境内でのプラスミド伝播に寄与していることが示唆された。
|