研究概要 |
これまでの申請者らの研究によって、コイやニジマスなどの多くの硬骨魚類が複数コピーの補体遺伝子をもつことが分かっている。本研究では哺乳類で明らかになった補体C3、及びC4の新機能である抗菌活性が、硬骨魚類の補体成分にも存在し、また機能的多様性を獲得しているのかどうかを明らかにし、これを魚病薬、及び食品の保存技術として応用することを目的としている。これまでの研究で、補体活性化断片の新機能である抗菌活性がコイ補体アイソタイプ(C3-Q1及びC4-2)において観察されることを確認した。平成21年度の研究では、これらの抗菌ペプチドがどのような種類の細菌に対して抗菌作用を示すのか、また、抗菌作用の強弱がどのような構造の違いに由来するのかを考察するために以下の2点について検討した。 1. 主要な食中毒細菌に対する抗菌作用 コイ補体成分アイソタイフのアミノ酸配列を基に合成した短鎖ペプチドを用いて、主要な食中毒細菌に対する抗菌作用をRDA法により測定した、これらの短鎖ペプチドは、0-157等の大腸菌、サルモネラ・エンテリティディスに対して抗菌作用を示すが、黄色ブドウ球菌、リステリア、セレウス菌等には作用を示さないことが判明した。一方、ヒトC3などと比較すると抗菌活性は弱く、食品の腐敗防比を目的とした利用を考える上では抗菌作用の増強が必要であると考えられた。 2. 抗菌作用の強弱に関与する機能部位(アミノ酸残基)の特定 抗菌活性の強弱に関与する機能部位(アミノ酸残基)を明らかにするために比較的強く抗菌活性が観察されたC3-Q1のアミノ酸配列を基に14種類の合成ベブチトをデザインし、抗菌活性を比較した,これらの抗菌ペプチドについては概ね抗菌作用の増強が見られたが、ヒトC3由来の合成ペプチドを用いた研究では塩分濃度の影響を強く受ける二とが示唆されており、今後、より詳細な作用条件について検討する必要がある。 平成21年度の研究において抗菌活性の強弱に関与する幾つかのアミノ酸残基を同定する二とに成功しており、平成22年度の研究においてはこれらの情報を活用し、より有用性の高い抗菌ペプチドの作成を行う,また、産業面での利用を目的として(1)短鎖抗菌ペプチドを利用した魚病のコントロール、及び食品の腐敗防止(抑制)技術の開発を試みる。
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