MYH_<M5>はトラフグの遅筋と心筋に特異的に発現するミオシン重鎖遺伝子(MYH)で、当該遺伝子の翻訳開始点上流4kbをプロモーターとして用いることで、ゼブラフィッシュ胚の遅筋線維を特異的に可視化できる。魚類の遅筋においてadaxial cellとして誕生し表層に移動する遅筋細胞の発生には、hedgehog(Hh)シグナルが決定的に関わるが、MYH_<M5>の上流4kbに緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子を連結したレポーターベクターをゼブラフィッシュ胚に導入し、さらに薬剤処理でHhシグナルを阻害したところ、無処理胚に比べて明らかにGFPの発現が減少した。すなわちMYH_M5プロモーターでGFPを発現する遅筋細胞の発生はHhシグナルに依存することが示され、移動する遅筋線維を可視化できていると考えられた。一方、移動しない遅筋細胞すなわちmuscle pioneerに相当する領域で発現するメダカのMYH_<emb1>については、その発現制御領域の下流でGFPを発現するコンストラクトを染色体に固定したトランスジェニック系統を確立し、それらが水平筋隔で特異的にGFPを発現することを示した。しかしながら、メダカでは既報のmuscle pioneerのマーカーであるengrailedの抗体が反応せず、muscle pioneerの可視化を確認できていない。今後MYH_emb1のプロモーターをゼブラフィッシュに導入し、GFPを発現する筋細胞の系譜を検討する予定である。
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