研究概要 |
国際競争時代における社会的な農業経営者教育システムの再構築に向けた方向性を見出すことを目的とし,(1)社会化された農業経営者教育システムの様態と経営支援政策のあり方,(2)農業国際競争に打ち勝つことができる能力を修得させるのに必要な農業経営者教育のあり方とその教育内容,の2点について調査・検討した。 いわてアグリフロンティアスクールにおいて,アンケートを行ったところ以下の点が明らかとなった。社会人である農業経営者は研修を積む必要を感じながらも,その時間をとるのに難しい状況にあるが,教育訓練・教育内容に関する情報不足や適切な教育訓練機関自体の不足も指摘され,その上で,農業経営に対する意欲や実力不足の克服のために,農業を学び直す社会的ニーズが一般的に考えられているより高いのが現状である。こうした傾向は,日本だけでなく韓国やオーストラリアでも同様に見られ,国際競争に対する経営者の環境適応であると解釈できる。 また,社会化された農業経営教育システムの国内外の事例調査の結果,教育内容としては,経営分野(例えば,経営者能力とビジネス感覚の養成,ロマンのビジョン化と戦略・実行計画の策定,自己変革の精神の醸成),生産分野(例えば,最先端の農業生産技術習得や農業イノベーションの達成),加工分野(マーケットイン戦略習得,生産・製品の開発や流通イノベーションの達成),といった3分野に集約できることが分かった。 以上の調査結果から,社会化された農業経営教育システムの社会的意義は高く,既存の行政機関だけでなく,民間組織,一般大学,NPO組織など多様な主体によって,それぞれの強みを活かした教育システームの構築が期待される。また,そうした主体をバックアップする経営支援政策も有効であろう。
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