研究概要 |
日本の拡大する輸入水産物需要を支えているのは主にアジア諸国であり、水産物輸入の約半分はアジア諸国の水産資源に依存している。中でも、東南アジアからの輸入量は一貫して増加傾向にあり、日本への輸出インセンティブが東南アジア地域における水産資源の乱獲を招いているとも指摘されている。本研究は、水産物輸出の増大と資源管理の関係を解明し、水産物貿易が持続的に行えるようにするために必要とされる政策・制度について検討を行うことを目的としている。 本年度は、インドネシアへの現地調査と同国の主要輸出品目であるカツオ、マグロを対象に、市場構造と資源管理のあり方について分析を行った。生物経済モデルに依拠する理論によると、水産物市場の寡占度は、その資源賦存量によって、資源管理へのインセンティブにも、ディスインセンティブにもなり得るからである。 カツオ、マグロの日本への輸出シェアが高い韓国、台湾、インドネシアを対象に、輸入価格、輸出量および為替相場のデータから、価格支配力を表わすマークアップ率を計測した(Goldberg and Knetter, 1990)。分析の結果、市場シェアが3国の中で最も少ないインドネシア(8-10%)においてのみ価格支配力は確認されなかった。資源の枯渇が問題になっているマグロの主要輸出国である韓国や台湾では、日本向けの寡占的輸出から生じるレントが資源管理へのディスインセンティブになっていることが示唆された。
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