日本の輸入水産物需要を支えているのは主にアジア諸国であり、水産物輸入の約半分はアジア諸国の水産資源に依存している。中でも、東南アジアからの輸入量は一貫して増加傾向にあり、日本への輸出インセンティブが東南アジア地域における水産資源の乱獲を招いているとも指摘されている。本研究は、水産物輸出の増大と資源管理の関係を解明し、水産物貿易が持続的に行えるようにするために必要とされる政策・制度について検討を行うことを目的としている。 本年度は、インドネシア東ジャワ州のスンダンビル漁港において市場調査を行った。漁港での水揚量は一貫して増加傾向にあったが、2005年をピークに緩やかに減少している。にもかかわらず漁獲圧力は減少しておらず、漁船数は増加傾向にあり、今後の資源枯渇が懸念される。産地価格は基本的にセリよって決定されている。近年マグロが高値で維持されており、そのことが高い漁獲圧力の要因になっていると考えられる。今後は他の市場と価格、水揚量を比較し、漁獲インセンティブとなっている産地の価格形成について調査と分析を行う予定である。 研究成果の一部はオーストラリア国立大学のアジア・太平洋学部のResource Management in Asia and Pacificsのセミナーにて報告した。低い関税率によって韓国、台湾、インドネシアから大量のマグロを輸入している日本の貿易政策が途上国での漁獲圧力を招いている可能性を示唆した。
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