研究概要 |
日本の輸入水産物需要を支えているのは主にアジア諸国であり、水産物輸入の約半分はアジア諸国の水産資源に依存している。中でも、東南アジアからの輸入量は一貫して増加傾向にあり、日本への輸出インセンティブが東南アジア地域における水産資源の乱獲を招いているとも指摘されている。本研究は、水産物輸出の増大と資源管理の関係を解明し、水産物貿易が持続的に行えるようにするために必要とされる政策・制度について検討を行うことを目的としている。 本年度の主な研究内容及び結果は以下のとおりである。 1.マグロ類の貿易統計データの分析 インドネシアから日本に輸出されているマグロ類の貿易統計から、長期供給関数を計測した。日本への輸出向け需要の拡大に伴い、輸出価格は2000年まで上昇している。しかしながら、2000年以降、輸出量が減少する中、輸出価格は依然として上昇傾向を示している。このことは、長期供給関数の形状が後方屈曲となっており、インドネシア周辺のマグロ類資源の減少によって限界費用が上昇し、輸出価格の上昇を引き起こしている可能性を示唆している。 2.漁港における調査 本年度は、Muara Baru漁港とBenoa漁港において、資源管理の実施状況や市場での取引方法に調査した。これらの漁港では、インド洋まぐろ類委員会(IOTC)によって試験的に漁獲物の体長,体重測定等の資源管理が実施されていた。市場取引は主に相対で行われ、日本の産地価格(焼津等)を参考にしているとのことであった。今後、Benoa漁港で入手した体長,体重測定等のデータを分析する予定である。
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