研究概要 |
今年度は、フードシステムの国際化の新たな展開についての調査を行うとともに、そうした条件の下での日本国内の地域農業再編の方向性について検討した。 第1に、制度変更を伴いながら急増するミャンマーからのこんにゃく原料輸入に関する現地調査を行った。具体的な対象は、ミャンマーの対日輸出原料加工業者、日本国内の輸入原料を利用する製品製造業者、両者を仲介している商社である。本調査によって、,(1) LDC関税暫定措置はミャンマーでは新たな現金獲得手段として期待されていること、(2)日本国内の商社、業者も、低価格の原料を入手する手段の増加として歓迎していること、ただし、(3)現在の利益を優先した短期的行動は将来の供給の不安定化につながりかねないこと、の3点を明らかにした。 第2に、日本国内の地域農業再編の方向性について検討するために、国産の原料を利用した六次産業的活動を行っている先進事例の調査を行った。具体的な対象は、日本国内のこんにゃく製造業者が粉ではなくコンニャクイモから製品化する「生いもこんにゃく」を扱う事例、養豚業者の組合が起点となって豚の総合テーマパークを展開する事例、村内の高齢者を対象に生産奨励した大豆を自ら製品化し販売する福島県鮫川村の取り組みなどである。以上の取り組みの共通点は、(1)起点となる本業の収益性だけでなく、波及効果も含めて総合的に事業を設計・運営していく視点が重要になること、(2)他の類似事業との差別化に成功しているその源泉は国内農業生産の場(フードシステムの川上部門)にあること、(3)取引関係において継続性、安心・安定感を重視していること、の3点であった。 「国際化」とは異なる視点から進行しているこれらの取り組みに、地域農業再編の今後の可能性を見出すことができると判断できる。
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