本年は食品循環資源の飼料利用に関係する諸制度・諸政策及び各種統計資料の整理により、食品循環資源の飼料利用の全体像を把握することを主たる研究課題とした。 統計資料の整理から、「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」の制定・施行以後、食品循環資源の飼料利用は活発化していることが確認される。しかしながら、2007年12月に改正された「食品循環資源の再生利用等の促進に関する基本方針」の「4食品循環資源の再生利用等の手法に関する優先順位及び手法ごとの取組の方向」において、食品循環資源の再生利用では飼料化を優先的に選択することが明確化され、酪農・畜産農家が食品循環資源の受け皿としてより強固に位置づけられているにも関わらず、食品循環資源排出量全体に占める飼料利用の割合に大きな変化を確認することはできない。 そこで、この要因について明らかにするため、食品循環資源の飼料利用における流通システムの構築と変化のプロセスに注目して、事例調査を行った。事例調査の結果、排出事業者における管理・ハンドリングの煩雑さ、残処理コスト負担、排出者責任問題などから、大量かつ安定的に引き受けを行い、飼料として確実に利用することが可能な大規模畜産農家が販売先として選択される傾向が強く、また、需用者である畜産農家においても、量的・質的安定性から大規模排出事業者が選択される傾向が確認された。また、中小規模排出事業者・排出事業者においても、飼料化が試みられているが、大規模排出事業者・需用者との関係と同様、上記諸問題から特定の主体との関係が構築されるため、食品循環資源の飼料利用全体としての拡大が困難な状態にあることが確認された。
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