本年度は、食品循環資源の全国的な利用動向および地域内流通における課題の析出を中心として研究を行った。 食品循環資源の利用動向については、2008年度に実施された「酪農全国基礎調査」の調査結果に基づき、酪農経営における労働力、飼養頭数、粗飼料自給率との関係からの接近を試みた。酪農経営では、歴史的に食品循環資源の飼料利用が行われてきたことに加えて、昨今の飼料価格の高騰なども影響して、60%以上の酪農経営が何らかの食品循環資源を利用している。しかしながら、労働力、飼養頭数、粗飼料自給率の側面から再整理すると、現在の需給接合システムの延長線上に利用拡大を展望することが困難な事態が確認された。それらの数値の大小が、食品循環資源調達・利用の制約要因として作用しているのである。食品循環資源の利用拡大を図るために、政策的支援も行われているが、労働力、飼養頭数、粗飼料自給率などからみた酪農経営の多様性に起因する問題は重視されない内容となっている。多様性と自助努力の限界を前提とした、需給接合システムの再構築が求められよう。 また、地域内流通における課題については、2010年1月にバイオマスタウン構想を公表した三重県名張市を事例として、農商工連携との関係から接近を試みた。食品循環資源をはじめとする各種バイオマスは、排出事業者・需用者のそれぞれが、供給先・調達先との関係・流通システムを構築することで再資源化されてきた。しかしながら、その限界が、特定のバイオマスへの需要集中、広域的・交錯的流通によるコスト上昇の要因ともなっている。商工会議所が主体となった農商工連携では、バイオマスの需給接合・調整を個々の排出事業者・需要者の間で行うのではなく、商工会議所が参画するバイオマスタウン推進協議会において行おうとするものである。地域内における需給接合・調整のあり方として、今後の推移について注目していきたい。
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