本研究の研究目的はこれまで取り組んできた研究成果を踏まえ、豊富な個票データと実態調査を通じて、経営発展過程における農業経営の財務行動とそれを補完する金融支援システムの実態を計量的・定性的実証分析により解明し、望ましい金融支援システムを構築することである。具体的な内容は以下の4点である。1)同じ社会経済環境において全く異なるタイプの主体が同時に存在する実態を踏まえ、その要因の解明及び農業経営における経営発展の規定要因の解明を、社団法人中央畜産会から提供される豊富な個票データ・実態調査に基づく計量的実証分析・定性的分析の両側面から解明する。2)農業経営の経営発展と財務行動の相互関係を、社団法人中央畜産会から提供される豊富な個票データ・実態調査に基づく計量的実証分析・定性的分析の両側面から解明する。3)わが国の農業金融支援システムの実態を解明すると共に、農業経営の経営発展に貢献する金融支援システムを構築する。4)計量的実証分析に利用するために、社団法人中央畜産会から提供される豊富な個票のデータベース化を行う。 本年度の研究実績は、以下の通りである。1)大規模畜産経営及び関係諸機関の実態調査を行った。農業経営における経営発展と財務行動における相互規定関係は、主体の属性によって異なると考えられるため、以下の3点即ち、(1)土地利用型経営及び施設利用型経営、(2)農業生産のみを行っている経営と農業生産だけでなく食品加工や流通・販売などにも取り組んでいる経営、(3)既存の農業経営と新規参入の主体、(4)耕畜連携に取り組んでいる経営及び地域の比較検討を行うための予備的調査を島根県を中心に、JA、畜産農家、農業改良普及センターに対して行った。2)財務行動の計量分析に利用するための大量な個票のデータベース化を、社団法人中央畜産会から提供された調査資料により行った。
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