本年度は、菜の花多段階活用過程の前段部分である菜の花栽培に着目し、それが地域に普及するための条件を探るため、菜の花栽培の先進事例である秋田県小坂町を対象として菜の花栽培に取り組む約30戸の農家にヒアリング調査を実施した。そこでは菜の花栽培に取り組んだ経緯と栽培の現状、今後の意向等を調査した。 そこで明らかとなったのは以下の諸点である。 第1に、農家が菜の花栽培に取り組んだのは、労力や費用負担が比較的小さく、しかも栽培に対する経済的サポートがあったからであった。中山間地域という厳しい条件において、菜の花が普及するためには、まず農家が取り組みやすい環境を整備することが必要であることが明らかとなった。 第2に、取組みの背景にあったのは、ビジネスという考え方よりは、農地保全あるいは地域活性化という視点であった。放っておけば荒れてしまう農地をなんとか維持し、地域を元気にしたいという農家の意志が働いていることが明らかとなった。 第3に、菜の花連作後の圃場の多くが以前の低利用状態に戻ってしまった一方で、輪作体系確立に向けた萌芽的な動きが見られ、今後菜の花栽培を定着させていくためには、後者の動向を広めていくことが重要である。 すなわち第4に、菜の花栽培を普及・定着させるためには、菜の花と輪作させる作物への栽培技術指導、助成措置といった、菜の花栽培にとどまらない広いサポートが必要である。
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