研究概要 |
本年度は、5年間にわたる秋田県内における菜の花多段階活用の取組みの成果と蓄積をふまえ、多段階活用過程の付加価値創出構造を明らかにするとともに、菜の花多段階活用が新たなビジネスモデルとして、わが国の農業・農村に広く普及する条件を提起した。 付加価値創出の内実を見れば,川下部分に位置する連携主体である加工販売業者が付加価値の大部分を取得し,川中に位置する搾油業者,川上に位置するナタネ栽培農家には,加工販売による付加価値は全くといってよいほど配分されていない。栽培農家が手にするのは国や町から支払われる交付金とナタネ販売額のみである。財源問題より前者は増える見込みはなく,後者については単収の減少傾向が続く中,これまた増える要素は乏しい。すなわち,いくら加工販売が伸びたとしても,現状の路線が続く限りナタネ栽培に対する経済的メリットを栽培農家はそれほど感じることができず,ナタネ生産基盤の脆弱化につながる恐れがある。事実,産地づくり交付金から水田利活用自給力向上事業へと変わったことで農家の所得は減少している。搾油業者についても,町内のナタネ収穫量が伸び悩めば,油取扱量も減ってしまうので,とちらも町内産ナタネに由来する付加価値増が困難な状況にある。 菜の花多段階活用が普及していくためには、まず生産基盤を整備する必要があり、そのための条件は(1)低単収・低収益問題、(2)連作問題、(3)品種問題、(4)菜種油の差別化問題、の4つの課題の解決である。
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