本研究の目的は、食品卸売業者の今日的動向に、冷凍野菜開発輸入業者が国内でどのような影響を受けているのか、また、当影響を受けて海外および国内においてどのような企業行動をとることによって対応しているのかを解明することである。 本年度は、主に食品卸売業界の今日的動向とそれに対する冷凍野菜開発輸入業者の国内での行動について、統計資料の分析と実態調査を中心に研究を進めた。注目すべき結果として、以下の点があげられる。 第1に、食品卸売業界の今日的動向について、業界を取り巻く環境は厳しさを増していることである。この要因は、食品の主要ユーザーである外食産業の更なる市場規模の縮小と利幅が低下する状況下にあることが関係している。前者については、1997年から9年連続で縮小しており、限られた市場シェアを巡って競争がますます激化している。そして、後者について、総務省統計局『消費者物価指数年報』および日本銀行調査統計局『企業物価指数』を参照すると、輸入食品の仕入価格は全体的に上昇しているにもかかわらず、販売価格は値下げしなければならないような傾向を確認できる。こうした結果、卸売業界では中小企業だけではなく、有名企業による大型倒産も相次いで発生している。一例をあげると、2003年10月に国内最大大手のアイスクリーム卸業者(輸入冷凍野菜も扱う)の藤三商会も630億円の負債を抱えて倒産している。 第2は、上述の状況を受け、冷凍野菜開発輸入業者は、チャネルの管理にあたり、信用調査企業の機能を活用して、新規取引を行う可能性のある企業及び既存顧客の経営状況を把握し、それに応じて与信枠を設定したうえで直接取引を行ったり、帳合取引を行ったりと、多様な取引形態を導入することによって売掛金が未回収となるリスクを回避していたことを、事例企業の結果から明らかにした。
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