冷凍野菜開発輸入業者は営利を追求する企業であるから、顧客のバイイングパワーの強化に対応するために、海外での製品製造段階においてコスト削減策を進展させていると推察される。ところが、実際には進展しておらず、輸出価格は上昇傾向にある。 そこで、本年度は沿岸部を中心に行われている中国産冷凍野菜の生産基地を対象にその要因の解明を試みた。 中国政府機関の資料、中国の冷凍野菜製造企業の内部資料、冷凍野菜開発輸入業者の内部資料をもとに考察した結果、輸出環境が変容していることが原因となっていたことが解明された。すなわち、ポジティブリスト制度導入以降の近年において、中国政府が輸出食品の安全確保に向けて食品テロ防止のための対策も打ち出す等法整備を進めるとともに、従来から講じていた対策についてもその内容をより厳格化させる姿勢をみせていることから、現地の冷凍野菜製造企業および日本の冷凍野菜開発輸入業者企もそれに対応せざるを得ず、コストが上昇しているのである。こうした一方で、品目数、件数、そして発生率をみると中国産冷凍野菜の日本での残留農薬違反は2007年から2009年にかけて減少しており、ポジティブリスト制度にみられる日本の検疫検査基準の強化に対して、中国で講じられている官民一体の対策は効果をあげていることが確認された。 なお、今年度は本研究の論旨に直接的に関与はしないが、フードシステム論的な視点から冷凍野菜開発輸入業者に関連する主体にも焦点を当て、各業界における構造変化の状況や企業行動等を解明した。
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