研究概要 |
既存の農業水利施設を維持して行くためには施設材料の劣化(損傷)を把握し,劣化度合いに応じた経済的な維持・改修を考える必要がある.本年度は,劣化により比較的大きな空隙が生成された材料の力学挙動を把握するために,EPSビーズ(発泡ビーズ)を用いて内部に球形の弱部を分布させた供試体による一軸圧縮試験および割裂引張試験の結果の検討を行った. ビーズの直径は0.22cmであり,密度は0.03g/cm^3である.モルタル打設時に,1L当たり2.55gおよび5.09gのEPSビーズが混入するようにEPSビーズを均一に混ぜた.EPSビーズを混ぜない健全供試体と2種類のEPSビーズ混入供試体の3パターンについて強度試験を行った.強度試験においてロードセルとひずみゲージにより荷重とひずみを計測し,AEセンサーにより供試体から発せられるAEを計測した.検討に用いたAEパラメータは,立上がり時間,残響周波数,平均信号レベル,イベントカウントレートの計4つである.全ひずみに膨張ひずみを導入し,載荷にともなう弾性係数の減少を損傷変数により表現することにより,応力ひずみ関係を整理した.それらの算定においては,膨張性損傷モデルを用いた. その結果,圧縮と引張の載荷形式において異なる傾向が観察され,圧縮においては損傷変数が0.1を超えた付近において膨張ひずみが増加し,AEパラメータの挙動が変化することが観察され,特に平均信号レベルと膨張ひずみの挙動が比較的良好に対応している.一方,引張においては膨張ひずみが漸次増加し,立上り時間は減少,残響周波数は増加傾向にある.
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