研究概要 |
対象地域でのアンケート調査を元に集計した「ソーシャルキャピタル(SC)の高い層の割合」を集落界ごとに振り分けたGISデータを構築し, サンプル数の少ない地域の変動を補正して最小限に抑えることのできる経験ベイズモランのI統計量を用いて分析を行った。その結果,集落ごとの「SCの高い層の割合」の明確な正の空間的自己相関を確認することが出来た。 一般に, 個々の空間的事物は, 空間座標とその属性によって捉えることができるが, 多くの場合は事物間の位置関係に対応した規則的な影響を受けあって共変動関係を持つ。しかしながら, SCは, 個人や集団の内面によって異なるものであり, その尺度としての「SCの高い層の割合」についてそれぞれ空間的な影響や関係を集落間で持つと考えるのは妥当ではなく, 歴史的な経緯で醸成されてきたと考えられるSCが, 集落の枠組みを超えた空間単位で醸成されてきたため空間的な自己相関が検出されたと考えられる。 近隣の集落では「SCの高い層の割合」の連続性が確認できたため, 集落ごとにSCを考慮するよりも, 施策の性質によっては, 旧村や市町村などの, より大きな単位に同一性のあるSCが存在するという空間特性を考慮すべき場合もあると示唆できた。人口の減りつつある日本の農山村でSCを計る様な場合にはサンプル数が極端に少なくなることが多々あり, 統計上の不安定さが増すようなケースは少なくない。本年度の研究で用いた経験ベイズの推定法によりこうした問題は解決が可能であることも実証的に示された。
|