研究概要 |
本年度は,ソーシャルキャピタル(SC)の構成要素を詳細に分析すること,および空間データマイニング(DM)手法を実際に適用すること,の二つのテーマについて研究を進めた。前者では,SCの構成要素のうち「信頼」に着目し,さらにこれを「一般的信頼」と「地域内住民に対する信頼」に分けて,自分は健康であると感じているかという「主観的健康感」との関連についてロジスティック回帰を用いて分析を行った。これには2006年に研究代表者等が京都府北部にて行った大規模アンケートデータを使用している。分析の結果では,「一般的信頼」よりも「地域内住民に対する信頼」の要素が「主観的健康感」に大きく関連があることが明らかとなった。従来のブリッジング型SCを重視すべしといつた多くの既往研究に対して,ボンディング型SCに着目した地域社会のあり方の重要性を指摘している。 後者の研究では,モンゴルにおける家畜分布の特徴を空間DM手法を用いて詳細に分析を行った。モンゴルは民主化後の自由経済のあおりを受け,遊牧民は利潤を追求して家畜を劇的に増やしてきた。しかし,植生に与える影響は既に環境容量を超えているという指摘もあり,モンゴル全土での家畜分布とその変化を詳細に把握する必要がある。そこで,Local Indicator of Spatial Associations(LISA)という空間分析手法を適用し,モンゴルの主要家畜(ラクダ,馬,牛,羊,ヤギ)の分布について時系列解析を行った。結果として,カシミヤが採取できるヤギの増加が著しく,この変化は地理的条件や気候に影響を受けずほぼ全域でヤギが増加しており,その他の家畜は地理的条件や家畜の特性による制約により,その分布には大きな変化がないことが明らかになった。この分析手法適用事例の成果により,今後本プロジェクトにおいて空間DM手法を適用する際にモデルの精緻化を測ることが期待できる。
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