平成20年度に獣害対策の改善として実施した(1)耕作放棄地の刈り払い、(2)河川堤防を利用した電気柵の設置、(3)河川との境界線における簡易道路の整備、の効果を継続モニタリングにより検証した。その結果、加害動物のうちイノシシには継続的な効果が見られるものの、シカには効果が減少しつつあることがわかった。(1)~(3)の対策は、開空間や人的活動による威嚇が効果的なイノシシに対しては効果があるが、シカには効果が発揮されないため、シカに対してはネット等による物理的防除の重要性が特に高いことが証明された。また、(2)や(3)の対策は、電気柵手前の足場環境を悪化させることにより加害動物による柵の跳び越えを阻害することが確認された。これらの結果を受けて、物理的障壁とその内縁・外縁空間を含んだ「野生動物と人間の境界空間」の概念を提起した。これを「防獣ベルト」と名付け、防獣効果と共に持続的管理が可能な「防獣ベルト」の設計手法を整理した。 また、新たに実施した(4)河川堤防の改修と(5)河川堤防付近の竹藪の伐採の防獣効果も検証した。このうち特に(4)については、電気柵の設置・管理作業負担の軽減や、電気柵内への人の出入りおよび営農への負担軽減につながることが、地区住民を対象としたアンケート調査から確認できた。住民ワークショップ方式による獣害対策立案手法も合わせて継続的に検討し、獣害対策の成功が非農家を含む地域全体に活力をもたらし、新たな農地整備への意向が高まるプロセスを確認した。
|