研究概要 |
今年度は, 作物根の伸張および吸水などの生理活動を行うことによって生じる土壌の透水性および保水性の変化を定量的に評価することを目的とし, 実験および解析を行った. まず, 透明のアクリル製のスリットを作成し, これに土壌を充填して作物を栽培し, 作物根の伸張状況および根群分布を可視化した. また, 作物根に小型ひずみゲージを設置し, 作物根の伸張によって生じる土壌構造の変化を継続的に評価した. さらに, 根群域付近の土壌を小領域に分割してサンプリングし, 飽和および不飽和透水試験を実施した. また, 同サンプルを用いて水分特性曲線を求め, 作物根が土壌の透水性および保水性に及ぼす影響を解明した. さらに, これらのサンプルに含まれる根量を求め, 作物根の含有率と土壌物理性の関係を明らかにした. これらの試験は, シュンギク, サラダナおよびダイズなど, 形状の異なる多種の作物について, 生育ステージ初期から終期にかけて連続して行った. この結果, 根の形状および根量に応じて土壌の透水性および保水性が大きく異なることが判明した. これは, 作物根の伸張によって作物根付近の土壌構造が変化し, 透水性および保水性に大きな影響を及ぼす土壌間隙の大きさが変化するためであることが明らかになった. また, 根の含有率によって異なる透水性および保水性を考慮に入れて, 土壌水分の動態を評価するシミュレーションモデルを構築した. 圃場実験においてモデルの妥当性を検証したところ, モデルで推定した土壌水分の変動傾向は実験値を概ね再現していた. 以上か照, 本モデルが, 作物圃場において作物根の土壌改良効果を考慮した水分動態の解明や消費水量の定量化が可能となった.
|