本年度は、環境配慮型事業に伴って整備された施設の維持管理実態に係る諸要因の分析を行った。まず、全都道府県に対して行ったアンケート調査の回答結果について、クロス集計を行った。その結果は、「事業の特性」「合意形成」「地元関係者の関与」「維持管理活動の概要」「苦情等」の5項目に大別して整理した。この結果に基づき、「苦情」を維持管理活動に対する負担感とみなし、その構造について分析を行った。まず、単純な集計を通して、苦情内容が金銭的負担に関するものと、活動の担い手に関するものとに二分されることがわかった。次に、苦情の有無を目的変数とする判別分析を行ったところ、活動主体が抱く負担感は金銭的な要因ではなく、主として社会構成上の問題(たとえば、受益農家のみが維持管理活動を行い、受益非農家は一切参加しないなど)に起因することが明らかになった。したがって、維持管理に伴う負担感が金銭的な対価で解決できないことから、農家/ 非農家を問わず、活動主体が活動に対して抱く価値観を高める必要を指摘することができた。以上より、維持管理活動を健全に維持していくには受益者全体の参画が必要で、活動主体が活動に対する意義と価値を理解し、また積極的に価値を創造していくことの重要性を実証することができた。
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