維持管理活動を健全に維持していくには活動主体が活動に対する意義と価値を理解することが重要性だという前年度の研究成果に基づき、本年度は、環境配慮型事業に伴って整備された施設を活用した住民主体の活動について、その価値構造がどのように認識されているのかを明らかにした。まず、活動を「製品」、活動主体を「顧客」とみなすことで、活動に参画する人々の集合を仮想的な市場とするマーケティングミックスを構成し、活動の価値分析を行うための概念整理を行った。この考え方に基づき、活動に対する価値観の構造を共分散構造分析によって解明することとした。分析事例は、大阪府のため池オアシス構想によって整備され、その後の地域活動の優良事例である長池オアシス(大阪府泉南郡熊取町)を対象として選定した。分析の結果、活動に対する意欲に直接影響する要因は「愛着心」と「制約感」であり、他の潜在変数は愛着心を高めることに寄与する要因と解釈できる一方、「制約感」は活動に対する意欲に負の影響を及ぼしているものの価値構造の主たる要因とはいえないことがわかった。以上のことから、活動に対する意欲を高めるには負の要因を取り除くよりも、活動や施設に対する愛着心を積極的に喚起する方が有効であることが示唆される。また、活動や施設そのものの魅力だけではなく、活動を通して新たな人間関係が形成されることの意義を認識することも、愛着心を育み、活動への意欲を高めるために重要であることが明らかになった。
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