過去2年の調査および分析を通して、良好な景観形成などを目的とする環境配慮型事業によって整備された基盤施設の維持管理や、施設を利用した環境活動に伴う負担感の成り立ちが明らかになった。そこでは、純粋な金銭的負担よりもむしろ、心理的な負担が主になっていることが示された。本年度は研究最終年度として、研究期間を通して得られた知見を整理し、将来の政策提言等に寄与するための総括を行った。以下に、その要点をまとめる。環境配慮型事業に伴って付加価値的に環境への配慮が行われた施設の維持管理においては、費用や作業頻度などの直接的な負担は従来のものと比較して有意な違いは見出せない。一方、施設を利用した環境活動は、この種の施設に特有の活動であり、担い手あるいは活動主体にとって新たな負担となることを避け得ない。両者共に負担の主たる要因は、活動に参画する住民の層(農家/非農家)に関する「社会面」と、活動に必要となる「資金面」の2つに大別される。しかし、特に環境活動において活動主体が拠出する資金が公共団体等からの助成金を大幅に上回る場合を除き、資金面の要因が活動主体の負担感を左右するわけではない。また、事業の計画段階における合意形成の仕方も、負担感にそれほど影響はしない。以上のことから、整備後の施設を健全に維持し、当初の事業目的を持続的に達成していくためには、単に費用弁償を行うのではなく、活動主体が活動に対する意義と価値を理解できるようにすることこそが重要であると結論づけられる。こうした活動に対する意欲の構成、すなわち価値構造は、主として「愛着心」と「制約感」から成り立っている。また他の潜在変数は、愛着心を高めることに寄与する要因と解釈できる。このように本研究を通して、活動の負担、すなわち広義のコストを構成する要因と、それを軽減するための方策について、一定の示唆を与えることができた。
|