研究概要 |
沖縄県伊江村を対象として実施した現地観測結果をとりまとめ、下記を明らかにした。1、伊江島内の主要な17箇所のため池のTOC(全有機炭素)平均値は3.0~6.0mg/Lであるが、最大値が10mg/Lを超えるため池が7ヶ所あり、水質悪化が確認された。ため池のTOCの増加は、高い栄養塩類濃度、豊富な日射環境、高い気温条件を背景としたMicrocystis等の植物プランクトンの増殖が主因であった。これらのため池の集水面積調査、発生負荷源調査結果から、個々の水質形成機構を明らかにし、それぞれのため池における有効な水質改善対策手法を提示した。2、畜舎から排出される窒素負荷の経路を推定するため、地下水中の窒素同位体比を観測した。しかし、地下水中の窒素同位体比の値と畜舎の位置関係の間に明確な相関は見いだせなかった。また、地下水硝酸性窒素濃度の空間的、季節的な変化と集水域内の施肥の投入量・時期との間で明確な相関は認められなかった。3、建設中の地下ダム集水域内の硝酸性窒素濃度は平均7.8mg/Lで、ため池のT-N濃度と比べると高いが、調査期間内では平均値は低下する傾向を示した。地下ダム集水域のフレーム調査から、集水域内では約400区画で主にサトウキビ、葉たばこ、牧草が栽培され、牛97頭が飼養されていた。農地と畜舎が主要な負荷源と推測された一方で、家庭からの負荷が地下水へ排出する可能性は極めて低かった。原単位法で算出した発生窒素負荷量は年間32.7tとなり、降雨の地下浸透率(40%,農水省地下ダム計画値)を用いて試算すると、発生窒素負荷の地下水への溶脱率は22%と推定された。
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