昨年度の実験により、青色光は赤色光に比べてホウレンソウ葉のNADH依存性硝酸還元酵素(NADH-NR)の活性を高めることが分かった。この酵素活性の増大はmRNAの転写量の増大に依存するのかを確認を行った。グロースチャンバー内にて約1ヶ月間白色蛍光灯で栽培したホウレンソウについて、1)青色光100%区、2)赤色光100%区、3)青色20%+赤色80%区の3つの光処理区を設定して光照射を行った。総PPFDはいずれも130μmolm^<-2>s^<-1>とした。光処理開始直後から3時間ごとに葉におけるnia転写量の経時変化を測定したところ、赤色光100%区に比べて青色光100%区は常にnia転写量が1.3倍高かった。青色光によるNADH-NR活性の増大にはnia転写量の増大が関与していることが分かった。 次に、短期間の青色光照射によりホウレンソウの硝酸濃度を低減できるか検討を行った。グロースチャンバー内にて約1ヶ月間白色蛍光灯で栽培したホウレンソウについて、培養液を水のみに変更した。水に変更後3日目に明期中の光を青色光、赤色光あるいは白色光(コントロール)に変更する光処理をおこなった。処理期間は3日間とした。総PPFDはいずれも130μmolm^<-2>s^<-1>とした。3日間の光処理後における葉の硝酸濃度は白色区<青色区=赤色区であった。また、長期間(1~2ヶ月)青色光照射を行って栽培されたホウレンソウの葉の硝酸濃度は白色光で育ったそれと同程度であった。青色光には硝酸還元酵素活性を高める作用があるものの、この活性の増加により体内に蓄積された硝酸を消費することは、ほぼないと判断された。以上の結果から、青色光照射によってホウレンソウの硝酸濃度を低減することは難しいと判断した。
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