研究概要 |
北海道南部,日高山脈南端に位置するアポイ岳周辺を対象地域として,衛星リモートセンシング画像を使用して,木本植物の分布域のモニタリングを行った。使用したリモートセンシング画像は,1980年代からのデータの蓄積があり,中程度の空間分解能(30m)を持つLandsatデータである。観測日は1985年6月25日,1992年6月28日,そして2000年6月18日の3時点である。積雪の影響を受けず,植物の生長期間中に観測され,同時に雲量の少ないデータを候補として,3時点の観測日を可能な限り,揃えた。またリモートセンシング画像中の木本植物の位置を特定するため,アポイ岳周辺の空中写真を使用した。山岳域のリモートセンシング画像は,起伏により,地形の影響を受けるため,地形補正を行った後,画像解析に使用した。1985年時点で木本植物の分布が確認されている地域と木本植物の分布域が拡大する可能性のある地域の双方における分光反射率の類似度を算出し,3時点で比較した。その結果,1985年から1992年において,対象とした地域の分光反射率の類似度は統計的に有意に高くなっており,1992年から2000年においても,その傾向が確認された。このことは,対象とした地域が示す分光反射率が木本植物の分光反射率に相対的に近づいたことを示しており,1985年から2000年において,木本植物の分布域の拡大を示唆する結果であった。この変化は,温暖化の影響のみでなく,自然の植生遷移とも関わるものと考えられるが,今後も,より新しいリモートセンシング画像を使用し,モニタリングを継続する必要がある。
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