研究概要 |
本研究の最終的な目的は,現行のトレーサビリティシステムに消費者志向の農産物の品質情報を付加した新システムの構築を行うことである.そこで本研究課題では,新システム確立の骨子となる流通環境に対応した農産物の内部品質変化の予測モデルの提案および内部品質予測のためのデータベース構築を目的としており,特に,実際の流通過程では,青果物がフィルム包装されている場合も多く,温度環境のみならずガス環境も定常状態ではないことを考慮し,本研究では,より流通現場に即した汎用的な品質変化予測モデルを構築することを目的とした. 実際には,現行のトレーサビリティシステムで入手可能な情報と併用することで,流通過程における農産物の内部品質変化量の定量的把握が可能となる予測モデルを提案することを目指した.ここで,本研究での内部品質とは,栄養成分として周知のアスコルビン酸および全糖の含有量を指標としたものである.具体的には,シュンギク,ブロッコリーならびにモロッコインゲンを供試材料として,下記の5つのプロセスからなる研究調査を行った. 1) 流通過程中の生鮮農産物が曝されている環境を調査した. 2) 品質変化予測モデル構築のための基礎データの収集として,プロセス1)の調査結果より得られた環境温度条件下での生鮮農産物の呼吸速度ならびに内容成分含量の経時変化を計測し,それぞれの特性を把握した. 3) プロセス2)で把握した呼吸特性から呼吸速度予測モデルを定式化し,さらに収穫からの積算呼吸量予測モデルに拡張した. 4) プロセス3)にて構築した積算呼吸量予測モデルより算出した積算呼吸量と内容成分変化量との関係を明らかにし,その関係をモデル化した. 5) プロセス4)で提案したモデルが,種々の生鮮農産物へ適用可能かどうか上記3種類の青果物を供試することで検討した.
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