本研究では、大気圧下で水を100℃以上に加熱した過熱水を用いた食品の殺菌について検討を行う。高圧で沸騰させた水をノズルから噴霧することにより、特異的な殺菌特性を示す気液混合加熱媒体が発生することが既往の研究から明らかになっていた。これはノズルから噴霧される水の温度はノズル噴射口において微細化される直前においては100℃以上となっていることから、高圧下で加熱された水は常圧に置かれた後、直ちに飽和温度になるのではなく、しばらくの間、過熱状態となっていると考えられ、この過熱状態の水が微生物に作用し、高い殺菌効率が現れることが仮説として考えられた。本研究では過熱状態の水の温度低下の過程や食品への熱伝達の過程を解析し、過熱水を用いて生鮮食品表面を短時間で加熱殺菌が可能であるかについて検討する。 平成20年度は微細水滴の温度測定を行う手法の開発を行った。微細水滴は直径が20〜40μmであるため熱電対等で温度測定をする場合、微細水滴を保温するための周囲の過熱水蒸気の温度と微細水滴の温度を判別することが困難であった。また放射温度計を使用する場合、微細水滴の背景の温度と微細水滴の温度の平均的な温度を測定してしまうと言う問題があった。本研究では温度制御可能な黒体板を背景として微細水滴温度を放射温度計で測定する手法を開発した。この手法では背景温度を一定に制御し水滴の量を変化させながら温度測定を行う。背景温度と水滴温度が異なる場合は、水滴量によって放射温度計の指示温度が変化するが、背景温度が水滴温度と等しくなるとき放射温度計の指示温度は水滴量の影響を受けなくなる現象を利用して水滴温度測定を行う。 測定の結果、ノズル内部温度が140℃の時、ノズル出口における水滴温度は105〜120℃の範囲にある可能性が高いことが判明した。
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