研究概要 |
本研究の目的は次の通りである. (1) 苗木観察に適した効率よいイメージング手法の開発を行う, (2) 苗木接合部の水の動態と形成層の発達過程の観察をすすめる, (3) より適した接木苗養生の環境条件を検討する. 20年度は(1)を中心に研究を進めた. (1)-a : 中性子ラジオグラフィおよび重水トレーサを用いた苗木内蒸散流の可視化 トマト接木苗の台木にはカゲムシャを, 穂木にはモモタロウを用い, 斜め接ぎの苗木を育成した. 冷中性子ラジオグラフィ装置にはドイツ, HZB研究所のCONRADを用いた. 本イメージングに適した台木, 穂木の支え方法について検討したところ, 中性子ビームを比較的透過するシリコンチューブが適することが明らかになった. また, 接木作業から3日から5日経過しても台木と穂木が未活着のときはD_2Oトレーサの移動が遅く, 未活着部分が水移動に与える抵抗が大きいことが予測された. (1)-b : シンクロトロンX線およびX線マイクロCTを用いた接木部位の組織観察 まず, ドイツ, HZB研究所, BAM-LineのシンクロトロンX線CT装置を用い, 植物茎のCTを再構築したところ, アーチファクトのため細胞間の境界が明確にならなかった, そこで, Phase retrievalアルゴリズムを用い画像を改善したところ個々の細胞が識別でき, 接木部位の組織観察に適用できることが明らかになった。また, X線マイクロCTを用いた接木部位の組織観察を行ったところ, 各組織のX線に対する透過度がほぼ同じで, 組織の状態を可視化することはできなかった. しかし, 画像分解能は10μm程度と組織観察には十分であると考えられることから, 今後銀系の染色試薬などを用い組織観察を試みる.
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