研究概要 |
研究の目的は次の通りである. (1)苗木観察に適した効率よいイメージング手法の開発を行う,(2)苗木接合部の水の動態と形成層の発達過程の観察をすすめる,(3)より適した接木苗養生の環境条件を検討する. 20年度は(1)および(2)を中心に研究を進めた. (1):蛍光試薬および重水トレーサを用いた苗木内蒸散流の可視化 トマト接木苗の台木にはフレンドシップを,穂木にはハウス桃太郎および麗容を用い,斜め接ぎ,および,ピン接ぎの苗木を育成した.根の上部で切断した苗に蛍光プローブを与えたところ接ぎ木部位における水の流れを可視化可能であることが明らかになった.また,植物試料に重水トレーサを与えることで,分光光度計で茎部における水の流れを可視化することが可能であった.この方法によって,トマト苗に根が付いた状態での苗木内蒸散流の可視化への可能性が広がった.そこで,今後2つの方法を用いて接ぎ木接合部の水の動態をさらに詳しく調査する予定である. (2):斜め接ぎおよびピン接ぎにおける接木部位の組織観察 斜め接ぎおよびピン接ぎにおける接ぎ木部位の観察を行ったところ,ピン接ぎで認められた組織癒合部の肥大は,斜め接ぎでは現れなかった.また,ピン接ぎにおいては組織癒合部上部にアントシアニンによると考えられる紫色の発色が認められたが,斜め接ぎでは見られなかった.アントシアニンはストレス反応によって発現することが多いため,ピン接ぎは斜め接ぎより水ストレスのかかる程度が高いと推察された.そこで,今後各接ぎ方と水ストレスの程度およびアントシアニンの発現について検討する予定である.
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