研究概要 |
最終年度は,トマトの接ぎ木不親和を用いた高糖度トマト栽培法の確立を最終的な目的とし,不親和の程度がトマトの生長および葉の糖度に及ぼす影響について検討した。 (1)苗木接合部の水の動態と形成層の発達過程 ナス台木に接ぎ木したトマト(ナス台トマト),トマト台木に接ぎ木したトマト(共台トマト),接ぎ木をしないトマト(自根トマト)の接ぎ木部分の通水抵抗と,形成層上部および下部の発達の程度を示す茎径比を比較した.その結果,茎径比の値が高いほど通水抵抗値も高い傾向にあり,特にナス台トマトで顕著であった。接ぎ木不親和の程度が増すことで,通水抵抗も増加すると推察された。 (2)接ぎ木不親和とBrix糖度の関係 不親和の起こりやすいナス台木とトマト穂木に実ったトマト果実では,糖含量が上昇し甘い果実が収穫できる.ナス台トマトの茎径比は共台トマトの約1.5倍以上の値となり,また,茎径比の値が高いほどBrix値も高くなる傾向がみられた。一方,接ぎ木部における通水性の低下により水ストレスがかかりやすい.すなわち,茎径比は接ぎ木不親和の程度を表し,不親和の程度が大きいほど糖度が増加すると推定された。 通水抵抗は植物にかかる水ストレスと関係が深いことから,まず接ぎ木接合部の不親和による通水抵抗の増加によってナス台トマトに水ストレスがかかり,その結果Brix値が上昇したと考えられた。また,地上部の乾物重と根の乾物重の比であるs/r比は,Brix糖度および通水抵抗と相関が見られた.すなわち,根の生長も接ぎ木不親和によって抑制されることが明らかになった.
|