研究概要 |
日本の農業従事者の高齢化が深刻化する中,生産管理の省力化を可能にする水耕栽培の重要性が高まっている.しかし水耕栽培には水を循環させるため病害が蔓延しやすいという欠点がある.そのため,菌の増殖を早期に検知できる菌濃度センサーが必要とされている.本研究の目的は,水耕栽培環境において利用可能な菌濃度センサーをMEMS技術を用いて開発することである.予備的検討で,底面に矩形の対向電極を配置した流路内に菌と酵母を流し,誘電泳動による分離制御を行ったが,その一部が電極に捕捉される現象が観察された.H20年度は,誘電泳動による微粒子識別に主眼を置き,従来の矩形電極の問題点を解決する新しい電極形状を提案し,実験によりその有効性を示した.H21年度は,電子線描画や深堀反応性イオンエッチングなどのMEMS技術を用い,マイクロ流路を試作した.菌に交流電界を加え,その際の物理的特性(形状や大きさ,運動状態など)が変化する菌の識別手法について検討を行った.菌以外のカビ(胞子)や酵母などの真菌,土・砂,植物残渣などの水耕液中微粒子についても実験を行って,この識別手法の選択性能を明確にした.また,ストレスとして交流電界の利用を想定し,電磁界シミュレーションソフトウェアを用いた数値解析を行い,交流電界が流路内の微粒子に与える影響を評価した。
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