研究概要 |
昨年度までの研究で,植物の炭素吸収量を決定する上で極めて重要な光利用効率(Light Use Efficiency,LUE)を,米国の衛星であるMODIS(Moderate Resolution Imaging Spectroradiometer)から算出した光化学反射指数(Photochemical Reflectance Index,PRI)で推定出来ることが明らかとなった。しかし,このLUEを用いた陸域植生の純一次生産量(Net Primary Production,NPP)の推定に関しては,詳細な精度検証は行われていないため,本年度はPRIから推定したLUEによるNPPの推定の際の精度検証を行った。具体的には,岐阜県高山市の冷温帯落葉広葉樹林と筑波大学の草地において自動連続観測された分光反射率データとCO_2フラックスデータを用いて,PRIとLUE,さらにNPPの関係について検証した。 始めに,PRIを用いたLUE推定手法について評価した結果,推定誤差は15から30%程度であった。これまで一般的に用いられてきたMODIS NPPモデルによるLUE推定誤差は30から50%程度であり,PRIによるLUE推定の方がより高精度で推定可能であることが明らかとなった。 次に,PRIから推定したLUEによるNPP推定精度を評価した。現在使用されているMODIS NPPモデルを用いたNPP推定誤差は30から50%程度であった。一方,PRI代替指標によるLUEを使用した場合のNPP推定精度は,20から25%程度に向上することが明らかとなった。 以上の結果から,本研究で提案した,PRIを用いたLUE推定手法により,衛星データを利用した陸域植生の純一次生産量広域推定の高精度化が可能であることが明らかとなった。
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