研究概要 |
当該年度ではまず,セルロース粉末添加時のメタン発酵による累積バイオガス生成量の経時変化について調べた。試験区は,含水率90%の区,85%,80%,75%及び70%の区を設け,それぞれ,平振盪恒温水槽を用いて35℃に維持し,十分な日数馴養した後に,7日間の回分培養実験を行った。回分培養実験では,ミリガスカウンターを用いて連続的にガス発生量を測定し,さらに一日2回ガスの採取を行い,ガスクロマトグラフを用いてバイオガスの組成を測定した。実験開始より約30分後からバイオガスの発生が見られた。ガスの発生速度は,1日目では含水率の高い試験区がより大きい傾向が見られ,含水率の低い試験区では発生速度が小さかった。その後,含水率が高い試験区でも発生速度は上昇したが,実験終了時の蓄積バイオガス発生量は70%試験区が最小であった。バイオガス組成については,85%試験区が最もメタンの割合が大きく,70%試験区ではメタンの割合が最も小さかった。なお,同一試験区におけるサンプル間のばらつきは,前年度と同様含水率の低い試験区ほど大きくなる傾向が見られ,メタン発酵反応が不均一な条件下で行われたことを示唆していた。 続いて,混合材料の有機固形物を用いて同様のメタン発酵実験を行った。基質投入後,90%試験区は速やかにガス発生を開始したが75%および70%試験区ではガス発生まで約3時間を要した。その他の発生ガス経時変化の各試験区の特徴は最初の実験結果とほぼ同様の傾向を示した。なお,80%,75%および70%試験区については,基質の形状の大小を変化させた実験,反応槽内を撹拌する実験も行った。その結果,形状の小さな基質を用いて,撹拌速度を高くした試験区ほど,ガス発生速度が高く蓄積発生量も大きくなった。また,サンプル間のばらつきも小さくなった。これらの結果から簡易なモデルを作成し,嫌気性消化モデルに導入したところ,シミュレーション結果は実測結果を良く再現することができた。
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