研究課題
本研究はマスト細胞におけるToll-like receptor(TLR)2を介した刺激が、その後に誘導される脱顆粒反応を抑制するという知見に基づいて、TLR2リガンドを有する発酵乳由来微生物のアレルギー性応答に及ぼす影響について評価を行うことを目的とするものである。今年度は、セルバンクに登録されている発酵乳由来または関連種の酵母や乳酸菌株を対象に、マウス骨髄由来マスト細胞(BMMC)の培養系を用いてスクリーニングを行った。各検体の加熱死菌体の凍結乾燥物を100μg/mlの添加条件で24時間の添加培養を行ったところ、脱顆粒反応抑制作用は酵母ではあまり観察されず一部の乳酸菌株が強い活性を持つことを明らかにした。しかし、この処理によってTLR2リガンド処理で観察されている高親和性IgE受容体(FcεRI)発現低下現象は観察されなかった。この点については当初の予想と異なる現象であり、乳酸菌の脱顆粒反応抑制減少におけるTLR2刺激の関与という観点からのさらなる検討が必要と判断し、来年度の重点検討項目に掲げた。脱顆粒反応抑制性菌株として見出したLactobacillus reuteri NBRC15892株のアレルギー性応答に対するさらなる抑制作用について明らかにするため、脱顆粒誘導後の炎症性サイトカイン発現誘導や脂質メディエーター産生作用における作用について経時間的な詳細な検討を行った。その結果、脱顆粒反応誘導1〜2時間後のTh2型サイトカインIL-4ならびにIL-13、脂質メディエーターであるプロスタグランジンD_2の発現誘導が抑制されることを明らかにした。以上の研究成果に基づき、計3回の学会発表を行った。
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Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry (in press)
Biological and Pharmaceutical Bulletin 31
ページ: 19-26