最終年度である本年度は、放牧家畜生産における家畜と草地とのインタラクションを考えるにあたり、前年度まで検討してきた家畜側の資源要求量(エネルギー要求量)推定法を確立することを第一の目的として研究を実施した。これまで、GPSやGIS、バイトカウンターや行動センサー(IceTag)を用いた家畜の行動指標からのエネルギー消費量推定法を確立することを目指し、さらに心拍測定による家畜の生理指標からのエネルギー消費量推定法と比較検討を行なった。さらに本年度は、近年、野生動物を対象として研究されている加速度センサーによる3軸体加速度を用いたエネルギー消費量推定法が家畜にも応用できないかと考え、新たに3軸体加速度を家畜の行動指標としたエネルギー消費量推定法を検討した。得られた結果は今後の利用可能性を示すのに十分なものであり、今後、継続研究として手法を確立させたいと考えている。 一方、家畜生産システム全体での家畜-草地インタラクションの最適化を検討するために、資源利用を最適化させる家畜生産モデルを新たに作成する必要がある。そこで本年度では、従来の家畜生産モデルの飼料利用を経済的かつ環境的に最適化させる新たなモデルを確立し、例として日本の和牛肥育生産や和牛繁殖生産に適用した。得られたモデルは十分利用可能であると国際的にも認められたため、それを応用し、放牧家畜の行動指標を統合することで、放牧家畜生産モデルの基本モデルを作成することができた。本課題の最終目標である、耕作放棄地での放牧利用による除草効果の定量化は完遂することはできなかったが、基本モデルが得られたことにより、その応用としての定量化は今後十分に実現可能である。
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