畜産食品由来ペプチドとして卵白ペプチドの抗酸化作用および免疫賦活化作用をヒトの腸管上皮細胞およびマウス脾臓細胞を用いた系でそれぞれ調べることを目的とした。 卵白タンパク質を各種酵素(消化酵素、食品工業用酵素)を用いて分解することによって、実験用試料を得た。抗酸化作用の評価方法は、ヒト結腸がん由来Caco-2細胞を用い、過酸化水素添加時に細胞から産生される炎症性サイトカインのインターロイキン8(IL-8)をELISA法により測定することにより行った。免疫賦活化作用の評価方法は、BALB/c雄マウスから採取した脾臓リンパ球に、卵白タンパク質の酵素分解物を添加し、その細胞増殖活性および抗体産生量について硫酸テトラゾリウム法およびELISA法によりそれぞれ調べた。 卵白タンパク質分解物の中でペプシン分解物に最も高いIL-8産生抑制効果が認められた。このペプシン分解物を高速液体クロマトグラフィーにより分画し、より抗酸化活性の高いペプチドを分離・精製後、LC-MSおよびプロテインシークエンサーにより同定した。その結果、オボアルブミン由来のヘキサペプチドが同定された。また、同様に卵白タンパク質分解物の中でペプシン分解物に強い細胞増殖活性および抗体産生増強効果が認められた。また、各種サイトカインのmRNA発現量を調べた結果、卵白タンパク質のペプシン分解物はIL-2およびIL-5のmRNA発現量を促進することが明らかとなった。このペプシン分解物から、逆相高速液体クロマトグラフィーおよび質量分析等により免疫賦活化ペプチドの同定を試みたところ、オボアルブミン由来のペプチドが複数同定された。
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