研究概要 |
平成20年度の研究結果において、放牧飼養により乳中シアル酸が増加する可能性について示唆した。本年度は、この乳中シアル酸の増加要因として考えられる複合糖質の濃度について検討した。シアル酸含有糖蛋白質の一つであるラクトフェリン濃度について、放牧舎飼い切り換え試験(2週間反転試験)のサンプルを希釈法及び希釈倍率を決定し、ELISA法により検討したが、現在までのところ明確な結果が得られていない。また、乳中免疫グロブリン(IgA, IgG, IgM)についても、乳サンプルの希釈法ならびに希釈倍率を決定し、現在測定中である。次年度は、複合糖質の中でもシアル酸含有率の高い糖蛋白質(κカゼイン)及び糖脂質(ガングリオシド)について検討する予定である。 チーズ製造に関しては2種類の乳酸菌スターター(ST-M5 : Streptococcus thermophilus, ABT-3 : Streptococcus thermophilus, Lactobacillus acidophilus, Bifidobacteriunm lactis S、ともにクリスチャンハンセン社)と放牧飼養及び舎飼い飼養乳を用いたモッツァレラ型チーズ製造法を確立した。これらのサンプルを分析したところ、放牧飼養乳を原料にすることで、機能性脂質である共役リノール酸のチーズへの高蓄積化が確認され、放牧飼養乳から乳製品を製造することが高付加価値化につながる可能性を示した。次年度はモッツァレラ型チーズ製造工程よりサンプリングした原料乳、チーズホエー及びカードにおけるシアル酸ならびに上述の研究により明らかになった放牧飼養乳に特徴的なシアル酸含有複合糖質の濃度変化を検討し、放牧飼養乳に特徴的な糖鎖構造と高付加価値化の関係について解明を目指す。
|