研究概要 |
卵子の体外成熟培養は生殖工学技術に必要な成熟卵子を多量に作出する技術として, その利用が期待されている。本研究では卵子内のミトコンドリアに着目し, 卵成熟過程におけるその役割を明らかにすることを目的とする。 これまでに我々は, 走査型電気化学顕微鏡(SECM)を用いてマウス胚およびウシ胚の呼吸活性を無侵襲的に測定することに成功し, 胚の品質と呼吸活性との間に相関があることを明らかにしている。今年度は, ブタ卵丘細胞-卵子複合体(COC)および卵子の呼吸活性について調べた。採卵直後は様々な形態のCOCが観察されるが, 形態的に正常なCOCの呼吸活性(F×10^<-14>mols^<-1>)は2.79±0.31, 形態的に異常がみ照れるCOCの呼吸活性は1.51±0.14で, 両者に有意な差が認められた。また, 正常なCOCの中でも呼吸活性の高いCOCから単離した卵子は, 呼吸活性の低いCOCの卵子と比較して高い呼吸活性をもつ傾向がみられた。さらに, 成熟培養後, 第一極体を放出した成熟卵の呼吸活性は, 第一極体が観察されない未成熟卵と比較して高い傾向にあることが明らかとなった。 SECMを用いることで, 単一のブタCOCおよび卵子の呼吸活性の測定に初めて成功した。次年度では, ブタ卵子のより詳細なミトコンドリア機能解析を実施する。
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